2022-07 推薦入試、ここだけの話

2021年10月25日月曜日

推薦入試

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こんにちは、理学部4年生のK.H.です。

私は2018年度の推薦入試(現在の学校推薦型選抜)で入学した、いわゆる「推薦生」です。


私が受験した年は推薦入試が始まってまだ3年目、東大推薦について巷に出回っている情報も少なければ、大学からも募集要項以上の情報を得る機会はありませんでした。


しかし現在は、在学の推薦生有志や大学本部が活発に情報を発信するようになりました。


中でも、本部高大接続研究開発センターが何十名もの推薦生を動員し、また何百人という参加者を迎えて今年度から実施している「東京大学学校推薦型選抜オンライン説明会 現役推薦入学生と交流しよう!」は、入試制度の説明・特徴的な活動をしている推薦生によるプレゼンテーション・推薦生と参加者同士のグループ交流等、盛り沢山の内容。


学校推薦型選抜に興味があって、この説明会に未参加であるという方がもしいたら、ぜひ11月実施の第三回説明会にいらっしゃってください(申込はこちらから)。


大学本部がこのように充実した情報発信を行っている中で、大学生協のスタッフである私が学校推薦型選抜に関するブログ記事を今更書く意味は何でしょうか。


募集要項に載っているような事項をここにそのまま写す必要もあまりないでしょうし、私個人の大学生活を紹介したところで、それは理学部志望のごく限られた皆さんの参考にしかならないでしょう(推薦生の生活実態は、学部ごとに大きく異なります)。


だからこうしましょう。

この記事では、「巷に出回っている間違った情報」や「大学公式からは言いづらい情報」を、私の口から「ここだけの話」としてお伝えします。

テーマは3つ。


  1. 国際科学オリンピック受賞経験や留学経験等がないと受験できないのか?

  2. 地方出身者・女子受験生の方が受かりやすいのか?

  3. 入学後に学部を変更することはできるのか?




1. 国際科学オリンピック受賞経験や留学経験等がないと受験できないのか?

学校推薦型選抜の受験を検討している高校生からよく聞かれる質問です。


社会一般でも、本学の推薦入試・学校推薦型選抜は「世界的な大会で受賞を重ねてきた超人」ばかりが受験する(しか受験できない)かのような言説・報道を耳にすることがあります。


手っ取り早く正解を手に入れるために、学校推薦型選抜の募集要項を参照してみましょう。

まずp. 1「1 東京大学学校推薦型選抜のアドミッション・ポリシー」中、「3 学校推薦型選抜の基本方針」では、学校推薦型選抜の実施にあたり、


日本の中等教育における先進的取組を積極的に評価し,高等学校等の生徒の潜在的多様性を掘り起こすという観点から,日本の高等学校等との連携を重視する


と記されています。


皆さんがいま通っている高校等を基点として、どのように学びを発展させてきたかが問われているのですね。


高校生の枠から遥かに飛び出たような超人が求められているわけではない、というイメージはここから汲み取れるでしょうか。


より具体的な記述を求めて先を読み進めると、p. 6「Ⅵ 推薦要件等」では


学部ごとに定める推薦要件(17~40ページ)に該当し,当該学部の学問分野に対する強い関心及びこれを本学で学ぶ積極的な意欲を持ち,学校長が責任をもって推薦できる者


の推薦が呼びかけられています。

では「学部ごとに定める推薦要件」とは何か。

ここでは私の通っている理学部の例(p. 41)を引用(一部省略)しておきますが、


自然科学に強い関心を持ち、自然科学の1つ若しくは複数 の分野において卓越した能力を有し、グローバルに活躍する 意欲があること。これらを示す実績として、以下の(ⅰ)または(ⅱ)もしくは両方を有すること。(ⅰ)在学中の特に優れた成績や研究成果など、(ⅱ)科学オリンピック、高校生科学技術チャレンジ、日本学生科学賞など、国内外で開催された各種コンテス トへの入賞、商品レベルのソフトウェア開発経験、科学雑誌への論文発表など。 


ここで、今年度受験生の皆さんには特に注目していただきたいページがあります。

理学部で言えばp. 40。

推薦要件等の詳細に先立って、学部長から受験生・学校関係者に向けたメッセージが掲載されています。


内容を簡単にまとめると、


  • 新型コロナウイルス流行の影響により、参加を予定していたコンテスト等の中止もあったことだろう。

  • 募集要項に「(ⅰ)または(ⅱ)もしくは両方を有すること」と書いてあるとおり、例年から(ⅰ)=校内での活動もきちんと評価している。

  • (ⅰ)しかなくても積極的に応募してほしい。


とのことです。

学部長メッセージは今年度、すべての学部について掲載されていますが、内容はどれも似通っています。


このように募集要項、特に学部長メッセージを丹念に読むと、大学が求めている受験生のイメージがずいぶん地に足ついたものと感じられるのではないのでしょうか。

2. 地方出身者・女子受験生の方が受かりやすいのか?

一部の塾などが、学校推薦型選抜は地方出身生・女子受験生が有利であるとの情報を発信しているようです。


これは完全に誤りです(前述のオンライン説明会等で大学本部も明確に否定しています)。


一般入試に比べて受験者の地方・性別バランスがとれているために、合格者についても前期試験と比べると、地方出身者や女子学生が多く見えるだけのことです。


たとえば2020年度推薦入試に関するこちらの記事で志願者・合格者に占める女子の割合を読み取ると、前者が43.4%で後者が45.2%。

ほとんど変わりませんね。

3. 入学後に学部を変更することはできるのか?

学校推薦型選抜に興味をお持ちの皆さんならご存知の通り、この入試は学部ごとに行われるものであって、合格すれば、後期課程で行く学部が固定された状態で入学することになります。


とはいえ1年生からいきなり専門の授業を受けるわけではなくて、2年生までの前期課程を駒場キャンパスの教養学部で過ごすのは一般入試入学者と同じ。


前期課程では、各科類の必修授業(基礎的な科目)はしっかり押さえつつ、選択科目の枠で広く様々な学問領域に触れることができます。

一般入試入学者はここで自分の興味をよく見つめ、希望の進路をどこかに定めて進学選択に臨むこととなります。


一方の推薦生は?

彼らは進むべき学問領域が入学時点で決まっているわけですが、ごく稀に、駒場2年間で興味の方向が変わってしまう人も見受けられます。


推薦生が入学後に、進学する学部を変更することは可能なのか。

この点について大学公式の(オンライン説明会等でなされている)回答は、「原則的には不可能」ということになります。


しかし、ここだけの話、私の知り合いには不可能であるはずの進路変更をしてしまった知人が何人かいます。

進学予定であった学部に「内定辞退」を申し出て、一般入試入学者と同列に進学選択に参加したのです。


「じゃあ、本当は推薦生の進路変更も可能ってこと?」


これに対する答えは、やはり「NO」です。


学校推薦型選抜で入った学生が他学部に進学する道というものは、依然として、公式に用意されたものではありません。


私が知っている数例については、あくまで本人たちがのっぴきならない事情で各学部に掛け合って、結果として変更できたというもの。

わかりやすく言えば、私はたしかに学部変更をした先輩を知っているけれども、本稿を読んでいるあなたが将来同じことをできるという保証はまったくないのです。


そんなわけで、「一生をともにする学問領域を18(±n)歳の冬に決断する」ということに不安を感じる方はやはり、前期試験を受験し、教養学部で心ゆくまで悩んでいただくのが良いように思います。

 

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