実は私は、とある防災系NPOの理事を務めています。
今回はそんな私から、「ひとり暮らしの地震防災」のお話です。
ここ東京では、今後30年以内に70%の確率で、巨大な「首都直下地震」が起きることが予想されています(政府地震調査研究推進本部地震査委員会による)。
「『今後30年以内に70%』って、なんと曖昧な...」と思われましたか?
そう、残念ながら、現在の科学で言えるのはこんな曖昧な予想のみです。
「曖昧な予想しかないから備えをしなくても良い」?
いいえ、それは全くの逆です!!!
いつ起きるか分からないからこそ、常に地震への備えを怠ってはいけないのです!
ひとり暮らしを検討されている方は、万が一のときに命を守ることができるよう、上京する段階から備えを万全にしておきましょう!
① 安全な地域を選ぼう
地震が起きた場合にどれほどの被害を受けるかは、第一には、「どの地域に住んでいるか」に依存します。
たとえば、海や川に近い地域では津波のリスクがあることは容易に想像できますね(※1)。
もとは海や沼であった地域は、地盤が液状化を起こす可能性があります。
また建物が密集した地域では、火災のリスクが大きくなります。
※1 ただし、東京に到達する津波は比較的小規模と考えられています。東京湾内部で、津波のエネルギーが拡散するためです。都内でまず心配すべき水害リスクは、河川の増水による浸水でしょう。
ではどのようにして、危険な場所を見分けることができるのでしょうか?
ここでお勧めしたいのは、東京大学が公開している「震源地別防災マップ」です。
このウェブサイトでは、地名を入力すると、その地域の「ゆれやすさ、建物倒壊危険度、火災危険度、総合危険度」を地図として表示してくれます。
このウェブサイトでは、地名を入力すると、その地域の「ゆれやすさ、建物倒壊危険度、火災危険度、総合危険度」を地図として表示してくれます。
物件を選ぶ際には、このウェブサイトに立ち寄って、その地域の危険度を確かめてみてください。
② 安全な建物を選ぼう
安全な地域に建っていたとしても、建物が崩れてしまっては意味がありません。
お次は安全な建物の選び方です。
建物の耐震性に関する、簡単な目安があります。
1985年以降に建てられた建物を選びましょう。
なぜ1985年以降であればよいのでしょうか?
これには、「建築基準法」という法律が関係しています。
建築基準法は、建築物に関する様々な基準を定めていますが、その中の一つに「耐震性」の基準があります。
現在の建築基準法が求めている耐震基準は、「震度6強~7の大地震でも倒壊しない強度」です。
そして、この耐震基準が定められたのが1981年施行の「新建築基準法」です。
1985年以降に建てられた建物であれば、ほぼ確実に、新建築基準法に基づいた設計を備えています(※2)。
物件を探す際には、大規模地震にも耐えられる「1985年以降建築の建物」を選びましょう!
※2 新建築基準法の施行前に行政への申請を行い、施行後に完成した建物は新建築基準法の耐震基準を満たしていない可能性があります。「1981年以降に建てられた建物」とお勧めしないのはこのためです。
③ 安全な部屋にしよう
地盤、建物の次は、内装の安全です。
たとえ建物の「箱」が無事であったところで、部屋の中で家具が倒れたら命に関わる事態となりえます。
室内の安全確保の基本は、「落ちてきたら痛いものを頭上に置かない」ことです。
食器や本など、重くて硬いものものを高い場所に置くことは避けましょう。
たくさんの本を読むのは良いことですが... |
また、タンスなど、背の高い家具を部屋に置くこともあまりお勧めしません。
やむをえず、重たいものを高い場所に置かざるをえない・背の高い家具を置かざるをえない場合には、その直下にあなたの頭がこないよう気をつけましょう。
たとえば、誰もいない部屋でタンスが倒れても大した被害は生じません。
しかしながら、そのタンスの横に誰かが布団を敷いて、寝ていたとしたら... 大惨事が起こります。
背の高い家具を置く場合に、それを倒れにくくする方策もあります。
それは、家具固定器具の使用です。
器具には様々な種類があります。
「その家具に適しているか」「固定する壁・天井に適しているか(※3)」「震度7程度の大地震にも耐えられるか」をよく確認しましょう。
なお、固定器具はあくまで家具を「倒れにくく」するだけのもの。
絶対に倒れないという保証はありません。
たとえば、最も確実そうに見えるL字金具+ネジ止めでさえ、壁の強度が足りずにネジが抜けてしまったら全くの無力です。
※3 固定手段によっては、壁や天井を傷つける可能性もあります。
なお、電子レンジなど背の低い家具であっても、水平方向に移動して(吹っ飛んで)来る危険性があります。
滑り止め等の措置を講じることをオススメします。
市区町村によっては、家具の固定を手伝ってくれたり、固定具の購入費を補助してくれたりする場合があります。
東京都防災ホームページで、実際にお住まいになる市区町村の情報をチェックしましょう!
④ 発災後を生き抜く
在宅避難って?
ここまでの4つの項目は、地震が起きたその瞬間に、自室で命を失わないための備えでした。
最後の項目は、地震が起きた後の避難生活を生き抜くための備えです。
地震が発生したあと、もしも建物に損傷がなければ(※4)、そのまま自室で生活する「在宅避難」を試みましょう。
地震が発生したら真っ先に避難所へ行くイメージがありませんか?
実際に、ここ最近の地震でも多くの被災者が避難所に集まる様子が報じられました。
しかし、避難所は「充分な設備も無いなか、見ず知らずの人々が隣り合って生活する場」。
慣れない環境から体調を崩す避難者も少なくありません。
このような事情から、東京都では、可能な場合には在宅避難を試みることが勧められています。
※4 2016年の熊本地震では、新建築基準法準拠の建物も多数倒壊しました。これは、震度7の地震が2度連続で発生したためと考えられます。新建築基準法準拠の建物は一度の大地震を凌ぐことはできますが、それを何度も耐えることはできないのです。したがって、一旦損傷した建物に留まることは、余震のリスクを考えると好ましくありません。
避難生活に必要なもの
それでは、(特に在宅)避難生活に必要なものをリストアップしてみましょう。
水
人間にとって最も重要な物質、水。
5年~10年程度保存することのできる保存水が便利です。
また、普段から冷蔵庫にお茶やジュースが入っていれば、それがそのまま非常時の水分にもなります。
人が一日に要する水は3L程度と言われています。
最低限、3日分の9Lは備蓄が欲しいところです。
食べ物
水と並んで重要なのが、食べ物です。
こちらもやはり、数年間もつ保存食が便利です。
保存食を選ぶ際に注意すべきポイントは以下のとおりです。
- 加熱する必要はあるか? 加熱を要する場合、カセットコンロ等の用意はあるか?
- 調理に水が必要か? 水を要する場合、充分な水の備蓄はあるか?
- 充分なバリエーションがあるか? 極限状態で何日にも渡って食べても、心が枯れてしまわないか?
- 量は7日分が目安。
このことについて、留意していただきたい点は以下のとおりです。
- 冷蔵庫→冷凍庫の順に開けましょう。冷凍庫は開けたら一瞬で常温になる一方で、閉めておけば数日間は冷たいままです。
- カップ麺等を箱買いするのであれば、常に一箱余分に置いておくと良いでしょう。食べ物以外の日用消耗品についても、同じことが言えます。
携帯トイレ
地震発生時には、上下水道が止まる可能性が極めて高いです。
そのような場合にあると便利なのが、携帯トイレです。
様々なメーカーから商品が出ていますが、機能性が大きく異なります。
特に、実際の災害現場で使用することを考えると、目隠し用のポンチョが付属する製品を選ぶと良いでしょう。
入居後の備えはこれを読んで!
ここまで、住まい探し・入居時に気をつけていただきたい事項を中心に説明してきました。
しかしながら、実際に生活する中で取り入れていただきたい防災の知恵や、いざというときのために仕入れておいていただきたい知識はまだまだあります。
そこで、入居後の備えに役立つ読み物をご紹介します。
どちらも東京都が発行している冊子です。
基本はコレ! 『東京防災』
もしもの時に身を守るための行動が、分かりやすく、網羅的に紹介されています。
コレ一冊あれば完璧!ですが、色々書いてありすぎて内容をすべて覚えるのは不可能です。
必要になったときいつでも取り出せるよう、スマホにPDF版をダウンロードしておきましょう!
女性目線の防災冊子 『東京くらし防災』
「女性視点の防災情報が必要だ」という問題意識のもと、特別なプロジェクトチームによって制作された冊子です。
女子学生の皆さんに、特にオススメです。
やはり、スマホにダウンロードしていつでも開けるようにしておくとよいでしょう。