1.はじめに
こんにちは。理科1類2年のT・Iです。
今回は東京大学の科類と進学選択制度に関して説明します。
2.科類に関して
東京大学に入学すると学生は全員前期教養学部に所属し、1年半駒場キャンパスで授業を受けます。
前期教養学部には文科1〜3類、理科1〜3類の合計6つの科類が存在しています。
2026年度入試における各科類の定員は募集要項によると
・文科1類 401名
・文科2類 353名
・文科3類 469名
・理科1類 1108名
・理科2類 532名
・理科3類 95名*1
となっています。
みなさんが今後出願するにあたって、どの科類を選択するのかという問題があります。
今回は各科類の進学選択における特徴を中心に説明します。
3.科類の比較 必修科目に関して
このセクションでは必修の授業という観点で文科と理科の各類の特徴を紹介します。
紹介にあたって、単位という制度が出てきます。
これは大学において履修した授業が合格であると認められたときに認められるものです。各授業において認定される単位数が決まっていて、進学選択をするにあたって決められた科目の決められた数の単位を取得することが求められます。
ここでは、科目の単位数が多い=その科目が重要視されている、と理解していただいて差し支えありません。
総合科目という科目分類も説明しておきます。
これは全員が共通して受講しなければならない科目とは別に、学生が規定に沿って自由に選択する授業のことを指します。
科目はL,A,B,C,D,E,Fの7系列に分かれ、扱う内容は大まかにLが言語、A~Cが人文社会科学(文系科目)、D~Fが自然科学(理系科目)に分類されます。
3.1 文科の必修科目の比較
文科の各類の違いが鮮明に現れるのは選択必修(社会科学)と総合科目です。
この他に科類間で必修の科目に明確な違いはありません。
社会科学は法、政治、社会、経済、数学の5分野の中から学生が規定数選択する形式なのですが、この規定が各類で異なります。
表形式にまとめました。
総合科目も同様に表形式でまとめました。
ここからどのようなことが分かるでしょうか?
まず、文科3類は他の文系科類よりも自分で選択できる幅が広いと言えます。
総合科目が多いということは、自主的に選ばなければならない科目が多いということですし、L,A~C系列の規定によって言語に興味があるならばそちらを多く取ることもできます。
社会科学を比較すると、文科1類は法と政治に、文科2類は経済と数学に比重をおいています。
後述しますが、文科1類は法学部に、文科2類は経済学部に進学しやすく、またそうする学生が多いです。
社会科学の規定はここに対応しているのです。
この他には文科生共通で、第二外国語、選択科目の人文科学、情報等を受講することになります。
3.2 理科の必修科目の比較
入学時には異なる科類として扱われますが、理科2,3類の進学選択までの扱いは全く同じです。
2つの類において、科目の規定は全く同じです。
そのため、この節では理科1類と2,3類という対比で比較します。
両者の顕著な違いは次の3点です
後述しますが、理科1類からは工学部や理学部など理工系へ、理科2,3類からは農学部や医学部など化学・生命系への進学がしやすいという特徴があり、必修科目がこれに対応しています。
この他に理科生共通で第二外国語、数理科学、力学、電磁気学、情報、実験(実習)を受講することになります。文科生同様総合科目の履修も必要となります。
尚、理系生で物理を選択していないという場合でも、希望する場合はそうした学生に配慮した講義を受けることができるため、ご安心ください。
4.進学選択に関して
4.1 制度の面から
東京大学入学後、2年生の夏休み進学選択が行われます。ここで2年生後半以降の後期課程で専攻する学問分野が決まります。
進学選択では3段階に分けて各学部学科が定員を設けて学生を募集し、希望者の中から成績順で進学先が決まるという形態で学生の進学先が決まります。
この定員の中には指定科類枠と全科類枠というものが存在します。
指定科類枠は第1段階において行われる、決まった科類の学生を対象にした募集です。
具体的な一例として、2025年度に理学部物理学科では理科1類から44名募集をしていた、などです。
この指定科類枠と科類は主に次のように対応しています。*2
・法学部 文科1類
・経済学部 文科2類
・文学部 文科3類
・教育学部 文科3類
・後期教養学部 (コースによる)
・工学部 理科1類
・理学部 理科1,2類
・薬学部 理科1,2類
・農学部 理科2類
・医学部 理科3類
この募集枠は全科類枠と比べて多く、比較的内定しやすくなります。
よく言う”理一からは工学部に行きやすい”などという言説はここに由来します。
既に進学したい学部が決まっているという方はこれを踏まえて科類選択するとよいでしょう。
逆に、全科類枠では科類を問わず募集されます。
よく東京大学では理転や文転ができるという言説を聞きますが、この制度によって可能になっています。*3
実際、私の先輩で文科3類から工学部に進学した方や、理科1類から経済学部に進学した方がいます。
この前科類枠は指定科類枠と比べたときに募集定員が少ないのも特徴です。
先述の理学部物理学科の例では、定員が6人となっていました。
東京大学では入学時には進学する学部が決まらず、1年半かけて様々な授業を履修して進学先を決めます。
まだこれから学びたいことが決まっていない方、いろいろな分野に興味があってもしかしたら今後学びたいことが変わるかもしれない方は、1年半のモラトリアム期間を有効活用して進路を決めたいですね。
1年生のうちに興味のある学科のガイダンスを積極的に受けるのもよいでしょう。
4.2 私の進路選択に関して
蛇足になりますが、私の進路選択に関する体験を紹介します。
私は高校時代から天体物理学に興味を持っていて、理学部の研究紹介を通じて理学部物理学科に進学したいと考えていました。
そのため、科類選択の時点から指定科類枠がある理科1類を目指していました。
大学入学後は一定の成績を維持できるように努めました。
進学選択では成績順に進学先が決まると先述しましたが、理学部物理学科は比較的高い成績が要求されるため、入学時から気が抜けませんでした。
特に進学後に重要視される物理学に関連する科目、特に力学や電磁気学には力を入れていたほか、総合科目で物理学に関連する科目を取ることで、進学後に備えるということも意識していました。
5.最後に
進学選択と聞くと高校時代には遙か先に思われるかもしれません。しかし、ここまで述べてきた通り、入学時の科類が1年半後の進学選択とそれ以降のあなたの進路に直結することは紛れもない事実です。
自分が東京大学でどう過ごしたいか、よく考えて科類を選択しましょう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。科類選択の一助となれば幸いです。
それでは次回の記事でお会いしましょう!
次回は【9/24】9月オンライン企画の質問回答をお届けします!
注釈
*1 本年度募集人数を97人に増員する申請を文科省に行っているため、変更の可能性があります。
*2 あくまで原則です。
例えば法学部や経済学部では一部理類生からの募集を行っているなど、例外も多いです。
*3 理転の場合は要求科目として進学選択時に取得しているべき選択科目の単位の規定があることがあります。理転したい場合は計画的な履修が求められます。